軽い死
「死んだらこの苦しみから
開放されるんじゃないか?」
軽い気持ちだった。
あ、コンビニ行こう、くらいの軽さだった。
その日も深夜まで残業。
土曜も日曜も祝日もない。
深夜の帰宅途中
大通りの横断歩道の前で
ふっと頭をよぎった。
今になって思えばうつ病の一歩手前の状態だった。
激務と最悪な職場
仕事は年中ずっと忙しかった。
職場の雰囲気は最悪。
先輩は後輩に仕事を教えない。
後輩は当然ミスをする。
上司に怒られる。
先輩は後輩のミスの後始末をさせられる。
ミスする奴が悪いという考え。
ミスした後輩は仕事ができない奴として
先輩からきつく当たられる。
上司は到底処理できない量の仕事を
押し付けてくる。
体調不良になれば自己管理できない奴が
悪いとされる。
「そのうち仕事を減らす」
「土日は休みにする」
しかし仕事は増え土日は返上になる。
嘘しかつかない上司。
仕事を教えないくせに
失敗するときつくあたる先輩。
誰も信用できない。
嫌いな人しかいない。
人間の心が死んでいく
今朝の通勤中、目の前で通行人が落とし物をした。
無視した。
拾わないし、落としたと教えもしない。
「落とした奴が悪い」
言う必要ない。
もう自分の心は死んでいた。
今日は何時に帰れるんだろう。
いつも夜遅くしか帰れない。
食事は休憩時間にお菓子みたいなものを
口に詰め込むだけだった。
まるでエサだ。
自分は人間じゃない。
ロボットでもない。
エサをやらないと死ぬ、家畜だ。
そんな家畜の自分が
この会社を出てなんか役に立つのか?
就職コンプレックスと甘え
留年、就職浪人、非正規、スキルなし。
そんな底辺の自分が仕事は辛いとか言っちゃいけない。
もっと辛い人はいる。
甘えちゃいけない。
ここでやっていけないような奴は
どこにも通用しない。
この会社で役立たずの自分でも
ここしか居場所がない。
しがみつくしかない。
でも
苦しい。
辛い。頭が痛い。ずっと熱っぽい。
人に優しくできない自分が嫌だ。
人を信じられない自分が嫌だ。
逃げたい
どうやったらこの苦しみから逃れることができるんだろう?
そうか、
死んだらいいんじゃないか?
車に轢かれたら死ぬんじゃないか?
信号を見ずに横断歩道を直進する。
深夜だったので大通りにも関わらず
車は通ってなかった。
残念ながら無事に渡り終えて、ふと思う。
死んだらどうなるんだろう?
「君は僕のことを忘れるだろう」
ちょうどその時に聞いていた曲の一節
「君は僕のことを忘れるだろう」
家族や恋人は私のことを忘れてしまうのか?
私が死んだら悲しむんだろうか?
涙が溢れてきた。
苦しいことから逃げたい。
でも死にたくない。
自分が消える悲しみと
自分を消そうとした恐怖を感じた。
軽い気持ちで死のうをしたことを
思いとどまったのは
大切な人たちの存在だった。
自分はひとりではなかった。
いのちだいじに
これは約9年前
ブラック会社にいた頃の心情を
綴ったものです。
今になって思えばバカな考えを
していました。
一番恐ろしいのは
死しか自分を救えないと思い込む
視野の狭さです。
心の病はここが恐ろしいのです。
おそらく普通の感覚の人じゃ
分からないでしょう。
私のような軽症はまだ戻って来られます。
でも重症になると「実行」してしまうまで
自分を追い込んでしまいます。
死んだらすべてが終わりなのです。
自分の苦しみを残った人に全部丸投げしてしまうのです。
そんなことにすら気がつかないのです。
私は恐ろしくなって会社から逃げました。
この会社に殺される。
自分を殺すように仕向けられると思いました。
決死の逃避行です。
しかし世間的にはただの退職です。
何も困ったことは起きませんでした。
自分の心を取り戻しました。
そして私は人間に戻りました。
嫌なことからは逃げていいんです。
心は痛みに悲鳴をあげています。
手遅れになる前に逃げてください。
嫌だ、辛いと思ううちはまだ自力で
逃げることができます。
仕事が辛いとか言うのは甘えている?
ふざけるんじゃない。
心が壊れてしまうまで働いているのに
逃げて何が悪い?
誰のものでもない
自分の人生で自分の命なんだ。
辛かったら逃げればいい。
死んでしまっては何もならない。
↓この漫画は当時の心境をよく表しています。
「そう!その通り!」と膝を打ち、半月板を損傷しましt。
ぜひ一読ください。